FPよもやまばなし

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経常収支は前年の半減に

経常収支は前年の半減に

(※用語の説明は、この記事の最後に記載)

財務省の発表によると、2012年の経常収支は4.7兆円の黒字となりました。
1985年の統計開始以来、最低の水準。
2011年の9.6兆円から半減しました。

また、12月は2か月連続で、経常収支が赤字となりました。

経常収支が大きく減ったのは、貿易収支が-5.8兆円の赤字になったためで、これは過去最大。
2011年の-1.6兆円から3.6倍も赤字が膨れ上がったためです。

2012年の秋までは、欧米中国などの海外景気の低迷で輸出が大きく落ち込む一方で、原発停止による火力発電用の原料などの輸入が増えたこともあって、輸入が輸出を上回りました。



問題はこの傾向が今後も続くのかどうか、です。

グラフを見てみると、貿易収支(水色の部分)の黒字額は、バブル崩壊後徐々に減ってきていて、2008年のリーマンショックで一気に減少しました。

一方、所得収支は順調に増え、2005年には貿易収支の黒字額を上回りました。


一国の経済が成熟していくと、貿易赤字となり、続いて所得収支も赤字となり、経常収支全体が赤字となっていくことが多いようです。

経常収支の動きとしては、国の経済の発展とともに、このような推移を示すことが多いとして、学説の一つになっています。

アメリカでは既にこのような推移を経た結果として、経常収支の赤字が続いています。
(そもそもアメリカは貯蓄が少ないために、海外から借金せざるを得ないとの考えもあります)

様々な理由はありますが、貿易収支が赤字になるのは、

・国が豊かになって、コストが上昇すると、輸出企業は海外での現地生産をしていきます。
・これで輸出が減り、一方でコストが安い国からの輸入が増えることで、

貿易赤字が拡大していきます。

日本は戦後懸命に働いて貯金(個人も企業も)を増やし、この潤沢な資金は、国の借金である国債に回り、また海外への投資に向かっています。

海外に投資すれば、その利子や配当金が所得収支となって日本に還ってきます。

まだまだ当分の間、所得収支が赤字になるのことはないでしょうが、

・貿易赤字が続くと、国としてみた場合、入るお金よりも出て行くお金の方が多くなるので、
・支払いに当てるため、海外に投資したお金を引き上げることで、
・次第に海外投資額が減少し、所得収支も減っていくと予想されます。

こんな形で、日本も経常収支は将来赤字になるだろう、と予想する方も多くいます。

経常収支は前年の半減に

そして、為替レート。

貿易収支が黒字、所得収支が黒字と言う事は、黒字になった分だけ海外から多くの外貨を得たわけですので、これを円に交換しなければなりません。

ですので、必然的に「外貨を売って、円を買います」。つまり円高になります。

米ドルに対しては、昨年の9月27日以降、ほぼ一貫して円安となっています。

昨年11月14日の野田さんの「解散宣言」より円安傾向に拍車はかかっていますが、実は、その1.5か月前から円安は始まっていました。

中国問題が起きた頃ですが、昨年はアメリカとユーロ諸国では経常収支が改善してきています。

アメリカは経常赤字ですが、シェールガスの生産拡大により、エネルギーの輸入が減り、貿易収支が改善してきています。
また、ユーロ諸国は、景気悪化により輸入が減って、貿易収支が改善し、経常収支としては過去最大になってきています。


為替レートは短期的には、金利の高低に左右されたり、リーマンショック・ギリシャショックのような金融問題が起こると相対的に安全な通貨が買われて動くことが多いのですが、

中期的には、経常収支のような国と国との資金移動の差によって動いていくと言われています。

欧米の経常収支が改善し、日本が悪化すれば、円安になっていくのは必然です。


最後に、細かな話しはしませんが、貯蓄が多い国は経常収支が黒字となります。

日本は貯蓄がまだまだ十分あるわけですが、高齢化によって国全体としては、貯蓄の取り崩しが起きはじめています。
現役世代は所得が伸びないため、貯蓄ができず、高齢世帯は取り崩すとなると、日本の貯蓄はどんどん減っていくことになります。

そうなると、経常収支が赤字となります。

貯蓄がなくなるということは、国民は国債を買うことができなくなるわけで、外国に買ってもらうしか方法がなくなり、ギリシャショックのようなことが日本にも起こりうるわけです。


話しが一気に飛んでしまいましたが、経常収支が前年比半減したということは、将来を不安にさせるに十分なニュースでした。

※用語解説

・貿易収支
  国と国との財貨の輸出入の差。FOB価格で計上したもの。貿易統計をベースとする。

・サービス収支
  国と国とのサービスの取引の差。
  輸送、旅行、通信、建設、保険、金融など、財貨以外のもの。

・所得収支
  外国への出稼ぎによる賃金、国と国との投資の収益(利子や配当等)の差。

・経常移転収支
  政府間の無償資金援助、国際機関への拠出金など。出稼ぎ外国人の母国への送金。海外留学生への仕送り等



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