総務省の発表によりますと、2014年9月の消費者物価指数(生鮮食料品を除く)(コアCPI)は、前年比+3.0%となり、前月の上昇幅より更に縮小。
前年比3%の上昇幅は、4月から始まった消費税3%増税が要因です。
※前回の消費税増税時(1997年4月)では2%程度の上昇
日銀試算によると消費税の影響は2.0%としていますので、消費税の影響を除くと+1.0%。
前月よりも0.1ポイント低下。
※消費者物価指数の調査品目の中で、消費税の影響がない品目
・家賃
・保険料(傷害、火災、自動車、生命)
・授業料(幼稚園、高校、大学、専門学校、私立中学、教科書)
・福祉(保育料、介護料)
・医療費(診療、出産入院)
・手数料(免許、印鑑証明、戸籍抄本、バスポート)
物価で問題なのは"エネルギー・食料品を除く総合指数(コアコアCPI)"ですが、こちらは+2.3%。
こちらは前月と同水準で4ヶ月連続同値です。
また、グラフにはありませんが、エネルギーも生鮮食料品も含んだ総合指数では+3.2%。
こちらは前月の+3.3%よりやや低下。
9月は消費税増税分(3%)以上の上昇となった品目がいくつもありますが、エネルギー関連の上昇率が鈍化してきています。
外国パック旅行 ・・・+6.2%
宿泊料 ・・・+8.4%
家庭用耐久財 ・・・+5.7%(エアコン等)
教養娯楽用耐久財 ・・・+7.3%(テレビ等)
電気代 ・・・+5.7%
都市ガス ・・・+3.9%
プロパンガス ・・・+7.7%
灯油 ・・・+6.9%
ガソリン ・・・+3.7%
こうした状況を踏まえ、政府は10月21日の"月例経済報告"では「消費者物価はこのところ上昇テンポが鈍化している」の表現となっています。
今年の春闘では、政府の賃上げ要請もあって大企業では「ベースアップ」をしたところもありましたが、中小企業はまだまだです。
また、今年夏の賞与については大手は全産業平均で、前年比8.48%増加(日経新聞調査)となっています。
※賃金上昇については、名目の収入は増えても、それ以上に物価が上昇しているため、実質収入は減っています。
サラリーマンの多くは中小企業に勤めているわけで、大企業だけでなく、中小にも賃上げが広がらないと(特に月給)、消費がグングン増えていくことはなさそうです。
先日発表された4月~6月のGDPの2次速報値は、前期比-7.1%と、予想以上の落ち込みとなり、この主因が「家計の消費の大幅マイナス(-19.5%)」。
5月以降持ち直しつつありますが、夏になって天候不順で猛暑が続かず、消費の盛り上がりに欠けています。
ただ、高額商品の消費は比較的堅調です。
日常生活品の消費が停滞していて、スーパー等の小売では一部商品で値下げをし、消費税UP前の価格に戻ったところもあるようです。
さて、
物価は前年対比で測定され、国の政策によっても大きく変動するため、実態がとても見えにくくなっています。
・2010年4月
高校授業料の無償化により、物価が下り、その1年後はプラス。
・2010年10月
たばこ税を上げたことで、物価が上がり、その1年後はマイナスへ。
・2010年冬以降
エコポイントによる駆け込み需要の影響で、販売不振。値下げへ。
・2012年以降
原発停止による、化石燃料購入で原料高となり、電気代値上げ。
・2013年~ アベノミクスの円安により輸入品の値上がり。
・2014年~ 消費税UPによる値上がり。
ガソリンは地球温暖化対策税新設。
資源エネルギー庁によると、レギュラーガソリンの全国平均価格は、2014年9月末現在は、2013年9月の水準よりも6.3円高い、166.3円。
原油価格の上昇により、昨年12月以降ガソリン価格は上昇してきていて、3月末は159.0円でしたが、
4月は消費税値上げと環境税により一気に上昇。
夏場以降、原油市場の価格の下落と消費落ち込みにより9月末は166.3円。
直近の10月27日時点ではさらに下がって161.8円。
日銀は、昨年4月に「物価上昇率の目標を2%を2年程度で達成する」とし、政府と一体になって様々な金融・財政・成長戦略を駆使して2%を目指していくことになりました。
10月7日の日銀黒田総裁の定例会見では
「暫くの間、1%台前半で推移するとみられます。その後は、本年度後半から再び上昇傾向をたどる」
「2014年度から2016年度の中盤頃に、2%程度に達する可能性が高い」と発言。
「「物価安定の目標」は、消費者物価の前年比上昇率で2%であり、その実現のため必要な時点まで、「量的・質的金融緩和」を継続していく」としています。
2%達成には自信がありそうです。
※日銀の物価上昇率の目標2%については、消費税の影響を除いた「生鮮食料品を除いた総合指数」です。
グラフにある通り、消費者物価は2008年は一時的に2%を超えましたが、通年では1.5%。
昨年以降の物価上昇の仕方は円安の影響で急激な上がり方を示しましたが、円相場が今年に入って101~103円程度でこう着してきましたが、8月後半以降一気に円安となり、直近では109円台に突入。
この円安を受け、秋以降再び”輸入物価インフレ”が起き、消費者物価の上昇が加速しそうです。
物価の総合的な上昇をみるGDPデフレーターは、前年比では2.0%となり、2009第3四半期以来の19四半期ぶりにマイナスから脱却。
デフレは解消しました。