総務省が2016年8月26日に発表した、2016年7月の消費者物価指数(生鮮食料品を除く)(コアCPI)は、前年比-0.5%となりました。
前月よりも0.1ポイント下落幅拡大。
また、グラフにはありませんが、全てを含んだ総合指数でもマイナス。
-0.4%。
こちらは前月並び。
※総務省は7月分より価格調査対象品目の見直しを行い、テレビ等の教養娯楽耐久財の構成比率が減少しました。(5年ごとに見直し)
これまでテレビ等は値上がりしていましたが、値上がり品目の構成比率が減少したため、この見直しにより物価指数全体としては「物価の下落に影響」しています。
◆同日、日銀が発表した"エネルギー・生鮮食料品を除く総合指数)"は、2014年秋以降下落が著しい原油価格の影響を除くため、エネルギーと値動きが激しい生鮮食料品を除いた、「物価の基調をみるための指数」ですが、こちらは+0.5%。前月よりも0.2ポイント下落。
◆7月の主な項目の上昇率は以下のとおりです。
電気代、都市ガス、ガソリンや灯油などのエネルギー関連の下落が激しいため、全体として「下落」となりました。
エネルギー関連の物価が-11.3%と大きく下落しています。
但し、前月の-12.0%よりも下落幅は縮小しています。
電気代 ・・・- 8.2%
都市ガス ・・・-14.4%
灯油 ・・・-25.4%
ガソリン ・・・-14.8%
生鮮食品 ・・・+ 0.7%
生鮮品を除く食料 ・・・+ 1.2%
家庭用耐久財 ・・・- 4.5%
教養娯楽用耐久財・・・ 0.0%(テレビ等)
教養娯楽サービス ・・・+ 1.1%(宿泊料等)
家事雑貨 ・・・+ 5.4%
衣料 ・・・+ 2.5%
通信 ・・・- 1.3%
◆政府は景気の状況について8月24日の"月例経済報告"では「個人消費は、消費者マインドに足踏みがみられるなか、おおむね横ばい。消費者物価は、横ばいとなっている。」の表現にしています。
◆さて、
物価は前年対比で測定され、国の政策によっても大きく変動するため、実態がとても見えにくくなっています。
・2010年4月
高校授業料の無償化により、物価が下り、その1年後はプラス。
・2010年10月
たばこ税を上げたことで、物価が上がり、その1年後はマイナスへ。
・2010年冬以降
エコポイントによる駆け込み需要の影響で、販売不振。値下げへ。
・2012年以降
原発停止による、化石燃料購入で原料高となり、電気代値上げ。
・2013年~ アベノミクスの円安により輸入品の値上がり。
・2014年~ 消費税UPによる値上がり、その1年後は影響なし。
ガソリンは地球温暖化対策税新設。
◆資源エネルギー庁によると、レギュラーガソリンの全国平均価格は、2016年7月末現在は、2015年7月の水準よりも20.3円安い、122.2円。
2014年以降、アメリカのシェールオイルの増産も背景にあって、原油価格の下落があり、欧州・アジアの景気落ち込みで、消費落ち込み、
更に、2014年11月27日にOPEC総会で、原油産出量の減産調整をしないことを決定したため、一層の下落を招きました。
また、アメリカのシェールオイルは、生産効率が上がり、その生産量を増やし始め、2015年12月4日のOPEC総会でも原油生産量の目標合意ができず、「供給過剰」が継続し、原油価格は下がり続けています。
更に2016年に入り、イランの輸出解禁により、OPECと主要産油国の会議では増産凍結の合意できていません。
グラフにあるとおり、ガソリン価格は前年対比での下落は止まったように見受けられますが、この原油価格の下落が止まらないと、「前年対比で価格上昇」となりませんので、それまでは、原油価格に影響される物価の下落は続きそうです。
◆日銀は、2013年4月に「物価上昇率の目標を2%を2年程度で達成する」とし、政府と一体になって様々な金融・財政・成長戦略を駆使して2%を目指していくことになりました。
しかし、原油価格の下落が続き、中国経済の悪化など、先行きの不透明感が増したため、2016年1月29日の金融政策決定会合で「マイナス金利を導入する」と決定。
今までは国債や株式などの金融資産の購入による金融緩和を実施してきましたが、原油価格の下落が継続し、物価上昇2%の達成もままならないため、市中銀行が日本銀行にお金を預ける残高の一定部分について、「金利をマイナス」にすることにしました。
「銀行が日銀にお金を預けると、預けた銀行が利息を支払う」ということになるため、民間への貸し出しを促す効果があります。
これによって投資が増え、経済が活性化し、物価が上昇していくシナリオです。
原油価格の下落により、なかなか物価が上がらない状況を考慮し、日銀の物価上昇2%の達成の目標時期は4月28日に「2017年度中」にずらしました。
マイナス金利の導入により、各銀行の普通預金金利は0.001%に下がり、一方で住宅ローン金利も過去最低の金利に下っています。
◆グラフにある通り、消費者物価(生鮮食料品を除く)は2008年は一時的に2%を超えましたが、通年では1.5%。
2014年は消費税の影響で、通年で2.6%の上昇。消費税の影響を除くと1.1%。
2015年は年間平均で、0.5%上昇。
日銀の見込みでは、2016年も+0.1%。
+2%は遠いですね。
尚、物価の総合的な上昇をみるGDPデフレーター(2015年)は、前年比2.0%上昇、2年連続のプラスとなりました。