総務省が2019年7月19日に発表した、2019年6月の消費者物価指数(生鮮食料品を除く)(コアCPI)は、前年同月比+0.6%となりました。
前月より0.2ポイント下落。
エネルギー・生鮮食料品を除く総合指数は、様々な要因で著しく動く原油価格の影響を排除するためエネルギーと、天候等の影響で値動きが激しい生鮮食料品を除いた、「物価の基調をみるための指数」ですが、こちらは+0.5%。前月並び。
また、グラフにはありませんが、全てを含んだ総合指数では、前月並びの、+0.7%。
◆6月の主な項目の上昇率は以下のとおりです。
エネルギー関連の上昇幅が縮小し、生鮮食品がプラス転換上昇、その他食品のプラス幅拡大、
通信費のマイナス拡大。耐久財の上昇幅が縮小。家賃がマイナスからプラスへ。
6月 ()内は5月
電気代 ・・・+ 2.5%(+3.6%)
ガス代 ・・・+ 3.9%(+4.8%)
灯油 ・・・+ 0.3%(+5.1%)
ガソリン ・・・- 2.7%(+2.8%)
生鮮食品 ・・・+ 2.8%(-0.1%)
生鮮品を除く食料 ・・・+ 1.2%(+1.0%)
家賃 ・・・ 0.0%(-0.1%)
家具・家事用品 ・・・+ 1.8%(+2.6%)
教養娯楽用耐久財 ・・・+ 1.0%(+1.3%)(テレビ等)
教養娯楽サービス ・・・+ 1.4%(+1.0%)(宿泊料等)
被服履物 ・・・ 0.0%(0.0%)
保険医療 ・・・+ 0.6%(+0.7%)
教育 ・・・+ 0.6%(+0.6%)
通信 ・・・- 4.6%(-4.1%)
◆政府は景気の状況について6月18の"月例経済報告"では、「景気は、輸出や生産の弱さが続いているものの、緩やかに回復している。個人消費は、持ち直している。消費者物価は、このところ緩やかに上昇している。」の表現にしています。
◆さて、
物価は前年対比で測定され、国の政策によっても大きく変動するため、実態がとても見えにくくなっています。
・2010年4月~ 高校授業料の無償化による、物価下落
・2010年10月~ たばこ税増税で、物価上昇
・2010年冬~ エコポイントによる駆け込み需要の影響で、販売不振。物価下落
・2012年~ 原発停止による、化石燃料購入で原料高となり、電気代上昇
・2013年~ アベノミクスの円安により輸入品の値上がり。
・2014年4月~ 消費税UPによる物価上昇。ガソリンは地球温暖化対策税新設。
・2019年6月~ 携帯通信料金値下げ。
・2019年10月(予定)~幼児教育無償化による物価下落、消費税増税による上昇
◆資源エネルギー庁によると、レギュラーガソリンの全国平均価格は、2019年6月末現在は、2018年6月の水準よりも6.0円安い、145.9円。
原油価格については、2014年以降、アメリカのシェールオイルの増産も背景にあって、原油価格の下落があり、欧州・アジアの景気落ち込みで、消費が落ち込み、更に、2014年11月27日にOPEC総会で、原油産出量の減産調整をしないことを決定したため、一層の下落を招きました。
しかし、2016年11月末に15年ぶりに「減産合意」され、新興国をはじめとして世界的な景気回復とともに、需要が増え、原油価格は上がってきています。
2018年は4月以降アメリカの対イラン経済制裁にともなう情勢の緊迫化により、原油価格が一層上昇。
しかし、10月下旬に160円台に到達後、世界経済の景気減速の懸念と、生産量の増加による供給過剰懸念により、下落が続いています。
前年対比では、2019年1月にガソリン価格はマイナスに転じましたが、3月から一旦プラスに転換したものの、5月には再度マイナス。
2018年5月以降上昇が加速し150円台に乗せましたので、今後 年末まではマイナスになるかもしれません。
※2019年7月16日現在の価格は145.6円で、前年比-4.3%の下落となっています。
原料である原油価格の上昇が電気代、ガス代にも反映し、プラスチック等の石油製品や運送料等に反映していかないと、物価の上昇は続きません。
◆日銀は、2013年4月に「物価上昇率の目標を2%を2年程度で達成する」とし、政府と一体になって様々な金融・財政・成長戦略を駆使して2%を目指していくことになりました。
しかし、原油価格の下落が続き、中国経済の悪化など、先行きの不透明感が増したため、2016年1月29日の金融政策決定会合で「マイナス金利を導入する」と決定。
今までは国債や株式などの金融資産の購入による金融緩和を実施してきましたが、原油価格の下落が継続し、物価上昇2%の達成もままならないため、市中銀行が日本銀行にお金を預ける残高の一定部分について、「金利をマイナス」にすることにしました。
「銀行が日銀にお金を預けると、預けた銀行が利息を支払う」ということになるため、民間への貸し出しを促す効果があります。
これによって投資が増え、経済が活性化し、物価が上昇していくシナリオです。
このマイナス金利政策も、金融機関の収益を圧迫する負の効果があるため、2016年9月21日の会議で、「物価が安定的に2%を超えるまでは金融緩和を継続し、新たな目標として、長期金利を0%程度で推移するように国債を買い入れる」と発表しました。
尚、日銀は2019年4月25日公表の"経済・物価情勢の展望"で、消費者物価2%に向けて徐々に上昇率を高めていき、金融政策委員の中央値としては2019年度+1.1%、20年度+1.4%、21年度+1.6%と見込んでいます。
※2019年10月には消費税の引き上げと幼児教育無償化が予定されていますが、上記見込み値はその影響を含めています。
(日銀は消費税上昇による影響を2019年、20年+0.5%、幼児教育無償化による物価下落の影響を2019年-0.3%、20年-0.4%と想定。)
◆グラフにある通り、消費者物価(生鮮食料品を除く)は2008年は一時的に2%を超えましたが、通年では1.5%。
・2014年は消費税の影響で、通年で2.6%の上昇。消費税の影響を除くと1.1%。
・2015年は年間平均で、0.5%上昇。
・2016年は年間平均で、-0.3%下落。エネルギー関連の下落。
・2017年は年間平均で、0.5%上昇。エネルギー関連の上昇。
・2018年は年間平均で、0.9%上昇。エネルギー関連と生鮮食料品の上昇。
+2%は遠いですね。
尚、物価の総合的な上昇をみるGDPデフレーターは、
消費税増税の影響もあって2014年は+1.7%。
(年間としてプラスになったのは1997年以来17年ぶり)
そして2015年は+2.1%、2016年+0.3%、
2017年-0.2%、2018年-0.1%。
デフレは解消されていないようです。